ほとんどのPPIが高血圧の発症と関連

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/12/05

 

 プロトンポンプ阻害薬(PPI)と高血圧症の関連はまだ明確ではない。今回、名古屋大学のBasile Chretien氏らはこれらの関連やPPIのクラス効果、用量依存性があるかどうかを調査したところ、ランソプラゾール以外のPPIで高血圧症との関連が示唆され、用量反応傾向が認められた。BMJ Open誌2025年11月27日号に掲載。

 著者らは、WHOの薬物監視データベースであるVigiBaseのリアルワールドデータを使用した。Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)V.26.1を用いて、1種類以上のPPI投与に関連する高血圧症の新規発症例を特定し、2024年10月28日まで系統的に収集した。多変量case/non-case研究デザインにおいて調整済み報告オッズ比(aROR)を算出し、PPI使用と高血圧症との医薬品安全性監視シグナル、およびPPI投与量と高血圧症の発症・悪化の用量依存性を分析した。

 主な結果は以下のとおり。

・データベースにはPPI関連高血圧症2万6,587件(2.3%)が報告され、女性(63.3%)に多く、45~64歳で最も頻度が高かった(41.4%)。薬剤別の件数はオメプラゾール9,935件、pantoprazole 8,276件、エソメプラゾール5,737件、ランソプラゾール3,430件、ラベプラゾール1,272件、dexlansoprazole 522件であった。
・年齢、性別、併用降圧薬、高血圧誘発が知られている薬剤を調整後、ランソプラゾール(aROR:0.99、95%信頼区間:0.96~1.03)を除くPPIで有意なaRORが認められた。
・用量反応関係を示唆する傾向が認められ、統計学的に有意ではないが、すべてのPPIにおいて中央値未満の用量では中央値超と比較して高血圧症のaRORが低い傾向があった。

 本研究では、PPI使用と高血圧症との関連を示す顕著な医薬品安全性のシグナルを示した。潜在的な用量反応傾向が観察されたものの統計学的有意性が認められなかったことについて、「統計学的検出力の限界が要因と考えられる」と著者らは考察している。

(ケアネット 金沢 浩子)